
23、24日は箱根方面の取材が重なったので、例によってお泊り。
23日はENGINE誌の大試乗会で輸入車勢ぞろい。ロールスロイス・ファントム(≒5000万円)もあって、試乗することができました。もちろん後席! そりゃあもう王様気分です。

BMW傘下になって、その庇護の元に開発されたクルマなので、いくつかのパーツはBMWからの流用もあるのですが、そんなことはまったく気にならない超ウルトラ高級感を堪能することが出来ました。
そのあたりはしたたかというか、ものすごく頑固なんですよね。
ドイツ車クオリティでカチッと出来ているのに、乗り心地に硬さがなくて、凄くゆったりした気分で乗れるんです。
結局のところ、その心地良さってのが高級車を高級車たらしめる根っこの部分なのでしょう。
ロールスロイス・ファントムに乗ると、なにを以って高級車とするのかというのがなんとなくわかる気がします。

後ろのドアは観音開き(写真参照)。ルーフ高があるので、腰をかがめて室内に入る必要がない。しかもカーペットは文字どおりのフカフカで、土足で入るのを躊躇するほど。
シートはいうまでもなく、各所にクロームメッキが施されているんですが、これがいかにも厚くて高そう! って感じ。
あれ? と思ったのは、リヤのドアに伝号開閉がついていないこと。苦閉めるためのボタンはついているんですが、動きはけっこう乱暴で、弾みをつけてバムッ! って閉まる。
トヨタなら、こんなとことも滑らかで静かにそっと閉まるんだろうなあ、と一瞬思ったのですが、たぶん違うんです。
このクルマのリヤシートに座る人には、必ずドア開け閉めしてくれる人が居るんですよ、きっと。電動ドアよりも丁寧に、そして静かに開閉してくれるんです(たぶん)。
フロアには毛足の長いぶ厚いカーペットの下に足置きにもあるんですが、これも手動というか、取り出して裏返してセットする。電動じゃあありません。
そういうことは運転手か、 お連れの人がやってくれる。つまりボタンさえ押さない人たちのためのクルマなわけです。
もうひとつ考えさせられたのは、室内は抜群に静かなんですが、外の音はちゃんと聞こえるんですよね。まどは二重ガラスになっていて、まどからの透過音も入りにくいように作られているんです。たぶんその気になって作れば、無音室に近い室内も可能なのではないでしょうか。
でもそうはしていないんです。
皆さんも試して見ることができると思うんですが、耳を塞いで音が聞こえない状態で、踏みきりを渡る、あるいは交通量の多い交差点を渡ることを想像してみてください。これ結構怖いんです。人間には五感があって、日常的にその機能を使いながら生活しているわけです。そのうちにひとつ聴覚が聞かない状態だと、それだけで不安になるわけです。
エンジンだって、音が聞こえなければ、いちいちタコメーター(エンジン回転系)を見なくては確認できないわけです。音が聞こえるから、エンジンを回しすぎているなとか、そろそろシフトアップしようとか、操作のイメージがわかるわけです。つまり音質や音量をできる限りマイルドにするのはいいけれど、無音室にしてはイケないんですよね。
高級車だから静かなほうがいいだろうとか、エンジンノイズはしないほうがいいし、振動は皆無が偉いなんてことはこれっぽっちも思っていないわけです。
それはドライバーだけでなく、 パッセンジャーでも同じなんです。いま自分の周りでなにが起こっているのか、外の音が聞こえるだけで、ある程度は想像できるわけです。
つまり、クルマとは、音も振動も出るものだし、高速移動するものだから、耳から聞こえる情報もとても大切であるという洞察があるんじゃないかと思うんです。
リビングの快適さや、視聴室の無音空間とはまったく種類が違うということなんです。
クルマ作りの究極がここにある。そんな感動的な後席試乗でした。


